【刑法】論証置き場

不作為犯の実行行為性
 この点について、実行行為は構成要件的結果発生の現実的危険を有する行為であり、不作為もかかる危険を惹起できるから、不作為も実行行為たり得ると解する。
 もっとも、自由保障機能の観点から、処罰範囲を限定する必要があるので、作為と構成要件的同価値性が認められる場合、すなわち、①法的作為義務があったのにその義務に違反し、②作為が可能かつ容易であったのに作為をしなかった場合に限り、不作為にも実行行為性が認められると解する。
①判断要素:法的作為義務の有無は、法令・契約・先行行為に加え、
      行為者に法益の維持・存続が具体的かつ排他的に依存し
      ているか否かを考慮要素として判断

因果関係(不作為ver)
 この点について、因果関係は社会通念を基礎とした違法有責行為類型たる構成要件該当性の問題であるから、①条件関係を前提に、②行為時に一般人が認識・予見し得た事情及び行為者が現に認識・予見していた事情を基礎事情として、行為から結果が生じることが社会通念上相当といえる場合に因果関係が認められると解する。/そして、不作為犯における①条件関係は、期待された行為を行っていたら結果が回避可能であったといえる場合に認められると解する。

因果関係
 この点について、因果関係は社会通念を基礎とした違法有責行為類型たる構成要件該当性の問題であるから、①条件関係を前提に、②行為時に一般人が認識・予見し得た事情及び行為者が現に認識・予見していた事情を基礎事情として、行為から結果が生じることが社会通念上相当といえる場合に因果関係が認められると解する。



客観的構成要件該当性
 そもそも、客観的構成要件も法益保護の観点から、実質的に考えるべきであり、行為者の認識と現に発生した犯罪との間に、保護法益・客体・行為態様において共通性、類似性があり、実質的な重なり合いが認められる場合には、その範囲で客観的構成要件該当性が認められると解する。

実行の着手
 この点について、実行行為とは、構成要件的結果発生の現実的危険を有する行為をいうため、かかる危険性を惹起した時点において実行行為性が認められ、実行の着手があるといえると解する。

他人利用の実行行為性
 この点について、実行行為とは構成要件的結果発生の現実的危険性を有する行為であるところ、他人を利用する場合でも、利用者が①正犯意思を有し、②他人を道具として一方的に支配利用し、③構成要件実現の現実的危険性を生じさせた場合には、直接正犯と同視され実行行為性が認められると解する。

因果関係の錯誤
 そもそも、因果関係は客観的構成要件要素であり、故意の認識対象となる。
 そして、故意責任の本質は、反規範的人格態度に対する道義的非難であり、規範は一般人に構成要件という形で与えられている。
 そこで、主観と客観が構成要件の範囲内で符合する限り、規範に直面し得たといえ、故意が認められると考える。具体的には、因果関係が認められることにおいても主観と客観とが付合すれば、規範に直面し得たといえ、故意が認められると考える。



実行の着手(主観ver)
 この点について、実行行為とは、構成要件的結果発生の現実的危険を有する行為をいうため、かかる危険性を惹起した時点において実行行為性が認められ、実行の着手があるといえると解する。/そして、犯人の主観もかかる危険に影響することから、犯人の主観、犯行計画をも考慮するべきである。

共同正犯からの離脱
 この点について、共同正犯の一部実行全部責任の根拠は相互利用補充関係の下、犯罪を実行した点にある。
 そこで、このような相互利用補充関係が解消された場合、共同正犯からの離脱が認められると解する。

具体的事実の錯誤
 そもそも、故意責任の本質は、規範に直面して反対動機を形成することが可能であったにもかかわらずあえて行為に出た直接的反規範的人格態度に対する道義的非難であり、規範は構成要件の形で一般人に与えられている。そこで、主観と客観が同一構成要件内で符合する限り、規範に直面し得たといえ、故意は認められると解する。
 また、構成要件の範囲内で故意を抽象化する以上、故意の個数は観念し得ないはずであり、複数の故意犯が成立しても観念的競合(54条1項前段)となるので処断上も不都合はない。                      (数故意犯説)

間接正犯の実行の着手時期
 この点について、実行行為とは、構成要件的結果発生の現実的危険性を有する行為であるところ、被利用者の行為は利用者の利用行為の因果的経過にすぎないから、利用者の利用行為にかかる現実的危険性が認められる。そこで、利用行為の開始時点で実行の着手(43条本文)が認められると解する。
被害者の承諾
 そもそも、違法性の実質は、社会的相当性を逸脱した法益侵害又はその危険にある。
 そこで、被害者の承諾による行為につき、①被害者の有効な承諾があり、かつ、②承諾を得た動機、目的、侵害行為の手段、結果の重大性等諸般の事情に照らし、当該行為が、社会的相当性を有する場合は、違法性阻却を認めてよいと解する。そして、①は、処分可能な個人的法益に関すること、真意によること、行為時に存在すること、外部に表示されていることが要件になると解する。

防衛の意思の要否及び内容(とっさにパターン)
 この点について、「ため」という文言から防衛の意思が必要であると解する。そして、本能的な防衛行為にも正当防衛を認めるべきであるから、その内容としては、急迫不正の侵害を認識しつつ、これを避けようとする単純な心理状態で足りると解する。

自招危難に緊急避難が成立するか
 この点について、緊急避難は違法性阻却事由と解されるところ、違法性の実質は、社会的相当性を逸脱した法益侵害又はその危険性にある。
 そこで、自招危難でも社会的相当性を有する行為は、緊急避難が成立すると解する。具体的には、①過失若しくは、②故意による危難であるとしても相当に予想外のことが生じた場合は、当該非難行為に社会的相当性が認められて緊急避難が成立すると解する。


違法性阻却事由の錯誤
 そもそも、故意責任(38条1項)の本質は、規範に直面して反対動機を形成することが可能であったにもかかわらず、あえて実行行為に及んだことに対する道義的非難にある。そして、違法性阻却事由を基礎付ける事実を誤信している場合、行為者は規範に直面しているとはいえないから、このよう場合には事実の錯誤として責任故意が阻却されると解する。

過失犯
 「過失」とは一般人を基準とした予見可能性を前提とした結果回避義務違反をいう。

「急迫」
 そもそも、「急迫」とは、法益侵害の危険が切迫していることをいうところ、その判断は、語義どおり客観的観点から行うべきである。
 そこで、単に侵害を予期したにすぎない場合は、急迫性は否定されないと解する。

36条2項の刑の任意的減免 (犯罪が成立した後に書くこと!!)
 この点について、36条2項による刑の任意的減免の根拠は、緊急状況における恐怖や驚がく等に基づく行為として責任が減少することにあり、かかる根拠は、自分の認識を前提として過剰性がある場合にも妥当する。そこで、急迫不正の侵害を誤信した場合にも、同項が準用されると解する。


承継的共同正犯の成否
 この点について、共同正犯の一部実行全部責任の根拠は、相互に他人の行為を利用・補充し合って犯罪を実現した点にある。そこで、承継的共同正犯の場合も、後行者が、先行者の行為及び結果を、自己の犯罪遂行手段として利用する意思の下、先行者の犯罪に加担し、現にそのような手段として利用した場合は、相互利用補充関係が認められ共同正犯が成立すると解する。

同時傷害の特例(207条)
 まず、意思の連絡がない場合でさえ207条の適用があることとの均衡から、共犯関係がある場合であっても、同時傷害の特例は認められると解する。
 もっとも、「傷害した場合」とある以上、罪刑法定主義の見地から、傷害致死には適用できないと解する。

不作為による幇助犯の成否
 この点について、「幇助」とは実行行為以外の方法で実行行為を容易にすることを言うところ、不作為によっても正犯の実行行為を容易にし得るため、不作為も幇助行為に当たり得る。
 もっとも、処罰範囲を明確にすべく、作為による幇助との構成要件的同価値性が必要であると解する。そして、かかる同価値性が認められるためには、正犯者の犯罪を防止すべき作為義務があり、作為に出ることが可能かつ容易であることが必要と解する。



I:原因において自由な行為の理論
 是非善悪の判断力が著しく減退しているため、心神耗弱者として刑が必要的に減軽されるのが原則である(39条2項)。
 しかし、<本件悪い事案>ため、刑が必要的に減軽されるとするのは、法益保護や国民の法感情に反する。
 そこで、責任無能力者の状態が行為者の責任能力ある状態での行為により自ら招いたものであるときは完全な責任を問うことができるとする、いわゆる原因において自由な行為の理論を適用して、39条2項の適用を排除できないか。その理論構成及び限定責任能力者に対する同理論の適用の可否が問題となる。
R:原因において自由な行為の理論
 この点について、責任非難は違法な行為をなす最終的な意思決定、すなわち、原因行為時における意思決定に向けられる。
 そこで、実行行為たる結果行為がかかる意思決定の実現過程といえる場合には、責任無能力者・限定責任能力者を問わず、原因において自由な行為の理論を適用できると解する。そして、かかる場合に当たるといえるためには、ⅰ原因行為と結果行為及び結果との間に因果関係があり、ⅱ原因行為から結果行為にかけて故意が連続していることが必要であると解する。

「自己の意思によ」るといえるか
 そもそも、中止犯の必要的減免の根拠は、自発的な中止行為に表れた行為者の真摯な人格態度によって責任非難の程度が減少する点にある。そこで、外部的障害によらず、行為者が、自発的意思により行動すれば、「自己の意思によ」るといえる。
 もっとも、人の意思決定は何らかの外部的事情に基づくものが通常であるから、行為者が外部的事情を認識していたとしても、当該事情が行為者にとって必然的に中止を決意させるもの出ない限り、当該中止行為は「自己の意思によ」るといえると解する。


「中止した」といえるか
 前述のように、中止犯の必要的減免の根拠は責任減少にあるから、「中止した」とは、結果発生防止に向けた真摯な努力を意味すると解する。

異なる犯罪の故意を有する者の間での共同正犯の成立の可否
 この点について、共同正犯において一部実行全部責任の原則が認められる根拠は、相互に他人の行為を利用・補充し合って特定の犯罪を実現したことにあるから、原則として同一構成要件の犯罪の共同が必要である。もっとも、構成要件間に実質的な重なり合いが認められる場合は、重なり合う軽い罪の限度での相互の利用・補充関係が認められる。そこで、この場合には軽い罪の限度で共同正犯が成立すると解する。

結果的加重犯の共同正犯の成否
 この点について、結果的加重犯においては、基本犯たる故意犯の実行行為に重い結果発生の高度の危険性が内包されているため、思い結果につき過失は不要と解する。そこで、基本行為について共謀があれば、基本行為と因果関係のある重い結果についても共同正犯が成立すると解する。

強盗の機会といえるか
 この点について、同罪は、犯罪学的にみて強盗の機会に人の死傷という重大な結果を伴うことが多いことにかんがみ、生命・身体の安全を保護する観点から規定されたものである。そこで、死傷結果は強盗の機会に行われた行為によって生じていれば足りると解する。
 もっとも、単に強盗の機会で足りるとすれば、逃走中の共犯者間の仲間割れや私怨による殺傷まで含み、処罰範囲が不当に拡大し妥当でない。そこで、強盗行為と密接な関連を有する行為から生じた死傷結果に限り240条が適用されると解する。    
※密接な関連…時間的場所的接着性
共謀共同正犯の成否
 この点について、共同正犯について、一部実行全部責任の原則が認められる根拠は、相互に他人の行為を利用・補充し合って、特定の犯罪を実現した点にある。
 そこで、相互利用補充関係が認められれば共謀共同正犯が成立する。具体的には、①共謀、②共謀に基づく共犯者の一人の実行行為、③正犯意思があれば、「共同して犯罪を実行した」といえると解する。
 ※正犯意思…重要な役割を果たしたかで判断(役割、影響力、地位、
   利益の帰属などを拾う)

240条後段が殺意ある場合にも適用されるか
 この点について、同条は、犯罪学的にみて強盗の機会に犯人が死傷の結果を生じさせる場合が多いことに着目した規定であるところ、故意に殺傷する場合こそ典型的な事例として立法者が予想していたといえる。また、同条では結果的加重犯に通常用いられている「よって」の文言が使われていない。そこで、同条は殺意ある場合にも適用されると解する。

結果的加重犯の教唆犯の成否
 この点について、結果的加重犯においては、基本犯たる故意犯の実行行為に重い結果発生の高度の危険性が内包されているため、思い結果につき過失は不要と解する。
 そこで、教唆に基づく基本行為と因果関係があれば、思い結果についても教唆犯が成立すると解する。


暴行後の領得の意思に暴行が認められるか
 この点について、強盗犯は暴行・脅迫を手段として財物を奪取する犯罪であるため、「暴行又は強迫」は、財物奪取に向けられている必要がある。
 そこで、暴行後に財物奪取意思を生じた場合は、新たな暴行・脅迫が行われない限り、「暴行又は強迫」は認められないと解する。もっとも、同罪が反抗抑圧状態を招来し、これを利用して財物を奪取する犯罪であることから、新たな暴行・脅迫は、自己の先行行為によって作出した反抗抑圧状態を継続させるもので足りる。

軽い故意に対応した客観的構成要件該当性が認められるか
 この点について、構成要件は法益侵害行為類型であるから、その該当性については、保護法益等で判断すべきである。そこで、行為者の認識した犯罪と現に発生した犯罪との間に、法益保護などの点において実質的な重なり合いが認められる場合には、その範囲で客観的構成要件該当性が認められると解する。

実行行為を分担していない者も共同正犯となり得るか
 この点について、共同正犯について、一部実行全部責任の原則が認められる根拠は、相互に他人の行為を利用・補充し合って、特定の犯罪を実現した点にある。
 そこで、相互利用補充関係が認められれば共謀共同正犯が成立する。具体的には、①共謀、②共謀に基づく共犯者の一人の実行行為、③正犯意思があれば、実行行為の分担がなくとも共同正犯が成立すると解する。



予備罪の中止犯
 この点について、未遂犯を前提とする43条ただし書は、予備罪に直接適用されない。しかし、中止犯の成立を否定すると刑を免除される余地がなくなり、実行に着手した場合と比べて不均衡が生じる。そこで、43条ただし書を準用し、予備罪の中止犯は成立すると解する。
 そして、法律上の減軽は1度しかなし得ない(68条参照)ことから、減免の基準は既遂犯の法定刑であると解する。ただし、既遂犯の法定刑を減軽しても予備罪の法定刑より重い場合は、予備罪の法定刑によるべきである。

他人予備
 この点について、同罪の「罪を犯す目的」という文言から、他人予備は「予備」に当たらないと解する。

実行の着手以前の予備行為
 この点について、予備罪も独立した構成要件として規定されている以上、その構成要件該当行為は実行行為と観念され得るから、予備行為の共同実行も可能である。そこで、予備の共同正犯は成立すると解する。

教唆行為に教唆犯が成立するか
 まず、共犯の処罰根拠は、正犯行為を介して法益侵害を惹起した点にあることから、教唆犯が成立するには、教唆行為と正犯の実行行為の因果関係を要する。
 そして、因果関係は、条件関係に加え、教唆行為から正犯の実行行為が生じることが社会通念上相当といえる場合に認められると解する。



第一行為、第二行為を1個の行為として評価すべきか
 この点について、両行為が、①時間的場所的に連続しており、②同一の防衛の意思に基づく場合には、同一の性質の行為といえるので、全体的に考察して、1個の行為と評価すべきである。

共謀の射程
 この点については、侵害行為に対して暴行を行おうとする意志と、侵害終了後更に暴行を行おうとする意思は通常別個のものなので、第二行為を行うにつき新たに共謀が成立したかどうかを検討すべきである。

殺意ある場合の240条の適用
 この点について、同条は犯罪学上強盗の機会に犯人が死傷の結果を生じさせる場合が多いことに着目した規定であり、故意に殺傷する場合こそ典型的な事例として立法者が予想していたといえるので、殺意ある場合にも適用されると解する。
 また、同条の第一次的な保護法益は生命・身体であり、既遂時期は生命・身体の侵害時点であると解する。

部分的犯罪共同説
 共犯者間において成立する犯罪が異なる場合であっても、構成要件的符合が認められる範囲内で共同正犯が成立すると解するところ、強盗殺人罪と強盗致傷罪の限度で構成要件的に符合するため、かかる限度で共同正犯となると解する。


実行行為なく共同正犯が成立するか
 この点について、共同正犯の一部実行全部責任の根拠は相互利用補充関係の下、犯罪を実行した点にある。
 そこで、共謀と、共謀者の一部による共謀に基づく実行行為が存在し、正犯意思があれば、実行行為の分担がなくとも共同正犯が成立すると解する。

侵害を予期した正当防衛
 この点について、あらかじめ侵害を予期し、その機会を利用し積極的に加害行為をする意思があるから、積極的加害意思が認められるので、侵害の急迫性を欠き正当防衛は成立しないと解する。

共犯者の違法性阻却事由の承継
 この点について、共同正犯においては、教唆や幇助と異なり従属性が妥当しないため、違法性は連帯せず、違法性阻却事由は別個に判断すべきであると解されるから、乙の違法性阻却事由は甲の罪責に影響しない。

非身分者も共同正犯に含まれるか
 まず、事後強盗罪は財産罪であるから、身体に対する罪せある暴行・脅迫罪の刑を加重した真正身分犯ではなく、「窃盗」という一定の身分がなければ成立しない真正身分犯と解する。そして、65条1項は、文言上、真正身分犯の共犯の成立と科刑につき規定したと解され、また、非身分者も身分者を通じ身分犯の法益を侵害できるから、「共犯」には、共同正犯も含まれると解する。



未遂の教唆の故意
 この点について、教唆の処罰根拠が正犯を介した構成要件該当事実の惹起にあることから、教唆の故意の内容として、正犯に対する犯罪遂行意思の惹起の認識、予見とともに正犯による既遂結果惹起の認識・予見が必要であると解する。

事後の財物奪取意思に強盗財の暴行・脅迫が認められるか
 この点について、強盗罪は暴行・脅迫を手段として財物を奪取する犯罪であるため、「暴行又は脅迫」は、財物奪取に向けられている必要がある。
 そこで、暴行後に財物奪取意思を生じた場合は、新たな暴行・脅迫が行われない限り、「暴行又は脅迫」は認められないと解する。

占有の有無の判断基準
 この点について、占有とは、財物に対する事実上の支配をいい、占有の意思と占有の事実を総合して判断すべきであると解する。

死者占有の故意該当性
 この点について、死者には占有の事実も意思も認められないため、死者の占有は認められないと解する。
 もっとも、被害者の生前の占有は、①被害者を死亡させた犯人との関係では、②死亡と時間的・場所的近接性が認められる限り、規範的にみてなお刑法的保護に値するといえるので、かかる場合には被害者の生前の占有に対する侵害が認められると考える、そこで、①②の認識を有していれば、相手方が死亡しているとの誤信があったとしても、「窃取」の認識があり、なお窃盗罪の故意が認められると解する。


「財物」に当たるか
 「財物」とは、財産的価値を有する有体物をいい、情報自体は「財物」に当たらないが、情報が登記された媒体物に財産的価値が認められれば、かかる媒介物は「財物」に当たる。


他者占有の財物は「窃取」に当たるか
 この点について、物の占有に上下主従関係にある複数人が関与する場合、その占有は、通常上位者に属し、下位者は占有補助者に当たると解する。もっとも、両者の間に信頼関係があり、下位者が処分権を有する場合は、下位者に独立の占有が認められると解する。

不法領得の意思の要否及び内容
 この点について、不可罰的な使用窃盗や毀棄罪と窃盗罪とを区別するため、不法領得の意思は必要と解する。そして、その区別は、権利者排除意思の有無、利用意思の有無によって行うことができる。
 そこで、その内容は、権利者を排除して、他人の物を自己の所有物として、その経済的用法に従い、利用し処分する意思であると解する。

不法原因給付による返還請求権の可否
 この点について、不法原因給付の場合でも、交付する財物自体には交付するまでは不法性はなく、受益者がその不法の原因を作り出したのであるから、同条ただし書によってなお被害者に返還請求権が認められると解する。

「他人の財物」に当たるか
 この点について、複雑化した現代社会においては現に財物が占有されているという財産的秩序の保護を図る必要があるから、奪取罪の保護法益は占有それ自体であると解する。そこで、「他人の財物」とは他人が占有する財物をいうと解する。

親族相盗例の適用
 この点について、同項は、法は家庭に入らずという法制政策的観点から一身的処罰阻却事由を定めたものと解されるから、所有者・占有者の両方と犯人の間に親族関係がある場合に同項が適用されると解する。

売却代金は「他人の物」といえるか
 この点について、財物の所有権は民法上、その本来の所有権にあると解すべきである点、指輪の所有権がYにある以上、その売却代金の所有権もYにあるものと解する。

委託信任関係が認められるか
 この点について、複雑化した社会において財産的秩序を保護するため、財物の所有者でない者との間の委託信任関係も刑法上保護されると解する。

「横領」したといえるか
 そもそも、「横領」とは不法領得の意思の発現する一切の行為をいい、横領罪における不法領得の意思とは、委託の任務に背いて権限がないのに所有者でなければできないような処分をする意思をいうと解する。

「欺」く行為といえるか
 この点について、「欺」く行為は、詐欺罪の実行行為である以上、財産的損害を生じさせる現実的危険性を有している必要がある。そして、詐欺罪も財産犯である以上、かかる財産的損害は実質的なものである必要がある。



処分行為といえるか
 この点について、処分行為の有無は、詐欺罪と窃盗罪との限界を画すべく、処分意思に基づく占有移転の有無によって決まり、その処分意思の内容については、被欺罔者の処分行為によって直接に財物の占有が行為者側に移転するような処分行為で足りると解する。

財産上の損害が認められるか
 この点について、詐欺罪も財産犯である以上、実質的な財産的損害が必要である。具体的には、被欺罔者の経済的目的が達成できなかったことが必要であると解する。

「偽造」したといえるか
 この点について、「偽造」とは、作成者と名義人の人格の同一性を偽る行為をいうと解する。

処分行為に向けられたものといえるか
 この点について、窃盗罪との区別のため、処分行為があるといえるためには、被欺罔者の意思に基づく占有移転が必要であると解する。そして、処分行為は錯誤に基づくことが必要であるから、被欺罔者と処分行為者は一致する必要がある。




クレカパターン
1 他人のクレジットカード使用につき詐欺罪(246条1項)が成立するか
 (1) 「欺」く行為に当たるか
  R:欺く行為
 この点について、「欺」く行為とは、相手方が真実を知っていれば処分行為を行わないような重要な事実を偽ることをいう。
  A:クレジットカードシステムは、カード名義人に対する個別的な信用を基礎とする
    から 加盟店にとって、カード使用者が名義人本人であるかどうかは、極めて重
    要な要素 そのため、加盟店は、カード使用者が名義人以外の者であると知って
    いれば、信義則上、商品の交付を拒絶すべきである。 本件のクレジットカード
    を使い、商品の交付を申し込む行為は、取引の相手が真実を知っていれば処分行
    為をおこなわないような重要な事実を偽る行為であり、加盟店に対する「欺」く
    行為といえる。

  ウ Cでパート店員に対する「欺」く行為に当たる
 (2) 錯誤に陥っており、交付は錯誤に基づく処分行為
 (3) 信販会社から代金の支払いを受けており、財産上の損害が認められるか
  R財産上の損害の要否及び内容
 この点について、詐欺罪も財産犯である以上、実質的な財産的損害が必要である。具体的には、被欺罔者の経済的目的が達成できなかったことが必要であると解する。
  A:商品の交付自体が損害であり、カード会社から支払いを受けたことは損害の発生に影響
    を与えない。 不履行により支払いを受けられないリスクを負う リスクを負わずに商品
    を売るという経済的目的が達成できなかった 財産的損害が認められる 

 (4) 詐欺罪の故意もある
 (5) 行為に詐欺罪が成立
2 私文書偽造罪(159条1項)
  交付するという「行使の目的」 「他人の署名」を使用し 売上表という
 「権利、義務……に関する文書」 作成人と名義人の人格の同一性を偽って
 「偽造」した →私文書偽造罪成立
3 偽造私文書行使罪(161条1項)
  真正文書として店員の認識し得る状態に置き「行使」したもの 
                            → 偽造私文書行使罪成立



249条の1項、2項どちらか
 この点について、預金口座に振り込まれせた場合、預金名義人たる犯人は自由に振込金を処分できるので、実質的にみて現金の交付を受けたと同視できる。
 そこで、預金口座に振込みを指示する行為は、現金という「財物」の交付に向けられたものと解する。

占有しているといえるか
 この点について、預金債権が認められる以上、受取人は預金者として当該金銭を法律上占有しているとも思える。しかし、預金者に預金の法律上の占有が認められる根拠は、その預金を自由に処分できる点にある。そして、銀行は誤振込の可能性がある場合には、その事実の有無を確認できるまで当該誤振込の受取人による払戻し請求には応じないはずである。そうだとすると、受取人は直ちに誤振込分の預金の払戻しを受けることはできないので、法律上の占有を認める根拠を欠く。
 そこで、誤振込の場合は、預金に対する法律上の占有は受取人にはなく、占有離脱物横領罪は成立し得ないと解する。

詐欺罪の故意
 この点について、二重譲渡であれば、あえて売買契約を結ばなかった特段の事情がないから、甲にBを錯誤に陥れることに向けられた欺罔行為はない。

土地買受行為の横領罪の共同正犯の成否
 まず、横領罪は真正身分犯であるとろ、文言上65条1項を適用する。次に、被身分者も身分者を利用することにより身分犯の法益を侵害することができることから、65条1項の「共犯」に共同正犯も含まれると解する。


「他人の物」といえるか
 この点について、財産法秩序維持という刑法の目的からは、民事法と異なり、交付者の所有権はなお刑法上保護に値する。そこで、不法原因給付であっても、「他人の物」といえると解する。

「業務」に公務が含まれるか
 この点について、偽計による妨害は強制力によって排除することはできないため、非権力的公務のみならず、強制力を行使する権力的公務も偽計による妨害から保護する必要があるといえる。そこで、同罪の「業務」には、すべての公務が含まれると解する。

不法領得の意思の要否
 この点について、不可罰的な使用窃盗や毀棄罪と窃盗罪とを区別するため、不法領得の意思は必要と解する。そして、その区別は、権利者排除意思の有無、利用意思の有無によって行うことができる。
 そこで、その内容は、権利者を排除して、他人の物を自己の所有物として、その経済的用法に従い、利用し処分する意思であると解する。


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